パーカッショニストのセルフ・ケア_04_腰・胸・首

Published by

on

■腰・胸・首の調整

私は打楽器(ハンド・パーカッション(コンガ・ボンゴ・カホンetc)・ドラムなど)を演奏する際には『肩の余分な力を抜く』ことが、『楽に、早く、良い音』で楽器を鳴らすために重要であると考えています。

そのためには、『理想的』な立ち方(座り方)を手に入れて、『姿勢維持に無駄な筋肉を使わない』ことが必要になってきます。

ポイントとなるのが、『腰(骨盤)』『胸(胸郭)』『首(頸椎)』の傾きの調整です。

理想的な立ち方のイラストです。
基礎的な知識・イメージについては、別の解説を用意していますので参考にして下さい。

【立ち方-01_立つときのイメージ】

【立ち方-02_アタマのイメージ】

【立ち方-03_多裂筋・脊柱起立筋】

【立ち方-04_大腰筋】

ここでは、『理想的』な立ち方・座り方を手に入れるための『腰(骨盤)』『胸(胸郭)』『首(頸椎)』のセルフ・ケア方法を紹介していきます。

■腰(骨盤(仙骨)・腰椎)のケア

腰(骨盤)は、前に傾きすぎていても(前傾)、後ろに傾きすぎていても(後傾)体に負担をかけてしまいます。

まずは、骨盤を構成している骨の中で要となる『仙骨』の存在をしっかりと把握していきましょう。

『仙骨』に薄い青色を塗ってあります。
腰の後ろ側に手を回して、仙骨をさわって、その形・大きさをアタマに認識させてあげて下さい。お尻のお肉があまりついていない部分ですから、仙骨表面のデコボコまでしっかりと感じられるかと思います。

次に、『多裂筋・脊柱起立筋』の緊張を取っていきましょう。
『脊柱起立筋・多裂筋』は、脊柱を支える(安定させる)ために非常に重要な筋肉です。

イラストを眺めながら、指先を使って筋肉の繊維直交方向(左右)に『多裂筋・脊柱起立筋』をほぐしていってください。

仙骨の一番下から腰椎の一番上まで2往復ぐらいほぐしてあげて下さい。腰の後ろ側が楽になった感覚がありませんか?

今度は、『大腰筋・腸骨筋』をストレッチしていきましょう。
『大腰筋・腸骨筋』は『立っている時や座っている時の姿勢維持』に重要な役割を担っています。

鼠蹊部(ふとものの付け根にあるみぞです。ビートたけしが昔『コマネチ・コマネチ!』ってやっていた場所といって伝わりますか?)に手をあてて下さい。

手を当てたまま、ゆっくりと『膝を曲げずに上半身だけを後に倒して』いってください。
今、手を当てている奥のほうの『大腰筋・腸骨筋』がストレッチされているのを感じることができましたか?

今度は、『後ろに倒している上半身』をゆっくりともとに戻していってください。『大腰筋・腸骨筋』が徐々に緩んでいくのを感じることができましたか?

続いて、『骨盤(仙骨)』の後傾方向の動きを出していきましょう。

椅子に座った状態で、膝の間に何か(ボール・ペットボトルなど)を挟んで下さい。膝の間に挟んだものを押しつぶすように脚に力を入れつつ、『お尻の穴』を引き締めて下さい。

力を入れると仙骨が後ろに傾いていき、力を抜くと後ろに傾いた仙骨が垂直に近い角度に戻っていくのを感じることができましたか?

座っている際の理想的な姿勢(脊椎)のイメージ図です。

座って演奏する際の仙骨の角度は、私の身体感覚としてはほぼ垂直になっている状態が理想的(体に負担がかかっていない)と感じています。

■胸(胸郭・胸骨)のケア

胸郭が前に傾いてしまっている、いわゆる猫背の姿勢だと、肩甲骨の動きを制限してしまいます。

肩甲骨を自由自在に動かして『楽に、早く、良い音』で演奏できるように、胸郭の傾きを調整していきましょう。

端的に言えば、『胸を張った姿勢』が理想的となるのですが、『背中側』の筋肉に力を入れて無理やりつくった『胸を張った姿勢』では逆効果となってしまいます。

『胸郭』を直接動かそうとしても思うように操作することは難しいのですが、『胸骨』に意識を向けながら動かすことにより、『胸郭』の傾きをコントロールすることができるようになります。

胸骨は,胸の前側・真ん中にある縦長の大きな板状の骨です。イラストを眺めながら胸骨を上から下まで触ってその大きさを把握して下さい。

両手の指先で、胸骨の部分にある『皮膚』を『胸骨からはがして上に動かす』イメージで下の端から順番に上に動かしていって下さい。肩甲骨を背中側で寄せながら皮膚を動かすのがポイントです。

次に、腹直筋の緊張を取っていきます。

イラストを見て頂くと、腹直筋が胸郭の中ほどから始まっているのが分かります。

腹直筋が緊張したままだと、胸郭を下の方に引っ張り続けてしまうことになってしまいます。
イラストを眺めながら、両手の指先を使って、筋繊維直交方向(左右)に筋肉をほぐすイメージで優しくマッサージしてあげて下さい。

次に、大胸筋です。

イラストを見て頂くと、大胸筋が胸骨のあるあたりから始まって上腕骨の上方までつながっているのが分かります。

大胸筋が緊張したままだと、肩甲骨や上腕を前方に引っ張ることになってしまいます。

イラストを眺めながら、両手の指先を使って、筋繊維直交方向(左右)に筋肉をほぐすイメージで優しくマッサージしてあげて下さい。

お勧めのストレッチを一つ紹介します。

お尻の後ろで手を組んだ状態で、胸骨を前斜め上方に動かすイメージで胸郭を動かすとともに、背中側で腕と腕を寄せつつ手を斜め後ろ下の方に動かすイメージで腕を伸ばしてください。

胸郭全体が後ろに回転するような形で胸を張ることができましたか?

■首・頭(頸椎)のケア

顎が前に出て、首・頭が前に傾いてしまっている、いわゆるストレート・ネックの姿勢だと、肩甲骨の動きを制限してしまいます。

ストレート・ネックになってしまう原因としては、『骨盤の後傾』、『胸郭の前傾』の他に、『首の骨(頸椎)』の『上の方(1番上と上から2番目の骨)』が動きにくくなっていることがあります。

まず、首と頭に関する『アタマの中のカラダのイメージ(ボディ・マップ)』を調整していきます。

人は自分の『アタマの中のカラダのイメージ』通りにカラダを使おうとします。
皆さんは、首(頸椎)と頭の境目はどこだと思っていますか?顎の高さぐらいだと思っていませんか?

そんなあなたは『首の骨(頸椎)』の上の方の動きが鈍くなっている可能性が高いかもしれません。

私のおすすめの『アタマのイメージ』を紹介します。

アタマ付近の拡大図に、△印の上にお椀を伏せたような形が乗っています。
イラストを眺めながら、『首(頸椎)と頭蓋骨の境目』を指で探してみて下さい。耳の穴の高さぐらいの後頭部の窪んでいるところ(△印の一番上)です。

後頭部の『首(頸椎)と頭蓋骨の境目』を指で触りながら、『うなずく・下を向く』動きをしてみて下さい。今まで思っていたよりも上のほうでアタマが動く感覚がありませんか?

続いて、顎を引く動作に働いている『顎二腹筋』の動きを引き出していきます。

イラストを眺めながら、指先を使って『顎二腹筋 前腹』を優しくマッサージしてあげて下さい。
(デリケートな部分ですし、位置を把握するのが難しい筋肉でもありますので、レッスンの際に詳しく解説しますね。)

次は、頭を後ろに動かす(後屈)、横に曲げる(側屈)、左右に回す(回旋)の動作に働いている『後頭下筋群』の動きを引き出していきます。

イラストを眺めながら、両手の指先を使って、筋繊維直交方向(左右)に筋肉をほぐすイメージで優しくマッサージしてあげて下さい。

最後に、『多裂筋・脊柱起立筋』の緊張を取りつつ、『頸椎』の自然なカーブを引き出していきましょう。
『脊柱起立筋・多裂筋』は、脊柱を支える(安定させる)ために非常に重要な筋肉です。

イラストを眺めながら、指先を使って筋肉の繊維直交方向(左右)に『多裂筋・脊柱起立筋』をほぐしていってください。

頸椎の一番上から一番下まで2往復ぐらいほぐしてあげて下さい。
また、ほぐしている際に、頸椎がイラスト左側のようなカーブを描いているか指先の感覚で確認していってください。

■まとめ

今回は、『理想的』な立ち方(座り方)を手に入れるための、『腰(骨盤)』『胸(胸郭)』『首(頸椎)』のセルフ・ケアについて解説を進めてきました。

カラダは触れば触るほど、あなたの思い通りに動くようになっていきます。『理想的』な立ち方(座り方)が出来ている時の身体感覚は、『上半身の重心が骨盤の中に納まっている』となります。

練習や演奏の際に、『肩が動きにくい』、『腕が動きにくい』と感じた時には、『骨盤の角度』、『胸郭の角度』、『頭の位置』が理想的な姿勢からズレていないか確認してみてください。

それでは、また。

関連資料  パーカッショニストのセルフ・ケア_01_肩

      パーカッショニストのセルフ・ケア_02_腕     

      パーカッショニストのセルフ・ケア_03_手

レッスンコンセプト①:カラダの使い方

HOME

主要参考文献

株式会社メディカルブックジャパン,疼痛治療カレッジ(PTC)

荒川裕志,プロが教える筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト辞典,ナツメ社

山北弘一,オンライン教材,「モーラー奏法完全マスタープログラム」
バーバラ・コナブル,音楽家ならだれでも知っておきたいからだのこと,誠信書房
ナガイカヤノ,演奏者のためのはじめてのボディ・マッピング,YAMAHA

コメントを残す