ストロークのコツ|ハンド・パーカッション|腕の動きのつながり|

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■ストロークのコツ=つながり

『早く・楽に・いい音』でハンド・パーカッション(コンガ・ボンゴ・カホンなどの打楽器)を演奏するための、『しなやか』かつ『スムーズ』なストロークを実現させるためには、『動きのつながり』・『筋肉のつながり』に関する知識・身体感覚が重要です。

この記事は、パーカッション奏者として私なりの視点で、『肩甲骨→上腕→前腕→手を連動させて使う感覚を体得する』ための解説としてとりまとめてあります。

また、モーラー奏法の習得に向けた身体の基礎知識としても活用して頂けると考えています。
モーラー奏法のハンド・パーカッションへの応用方法については、別途整理した解説がありますので、興味がある方は、リンク先の記事をご覧ください。

【モーラー奏法のハンド・パーカッションへの応用】

■4種類の腕のつながり

『腕のつながり』は大きく分けて、4種類のつながりがあります。
具体的には、『腕の前側 or 後側』と『表層 or 深層の2種類』で2×2の4種類となります。

『表層 or 深層』は何となくイメージできても、『前側 or 後側』は少し解説が必要ですね。

手のひらを下にして、コンガの打面の上(や机の上)に置いて下さい。
この状態で、『床(下)を向いている部分が、腕の前側』・『天井(上)を向いている部分が、腕の後ろ側』となります。

それでは、4種類のつながりを一つずつ確認していきましょう。

◆『① 腕の前側(下側) & 表層』のつながり

『腕の前側(下側) & 表層』のつながりは、『大胸筋』と『広背筋』から始まります。

大胸筋は、胸から始まって上腕骨の上部につながる筋肉です。

広背筋は、背中から始まって上腕骨の上部につながる筋肉です。

ここで、着目して頂きたいのが、上腕骨につながる場所が『大胸筋・広背筋』とも同じだという点です。

イラストを眺めながら、『大胸筋・広背筋』が上腕骨につながる場所を探して、親指で優しく押してみて下さい。
筋肉の束の隙間を上手に見つけて、指先で上腕骨をコリコリできると良いですね。
(痛みを感じる方は、痛気持ちいい範囲に留めておいてください。)

さて、背中と胸から始まった、『腕の前側(下側) & 表層』のつながりは、『上腕骨』の中ほどにつながった後は、上腕骨の近くの筋肉と筋肉の間を通って、手を握る筋肉(前腕屈筋群)につながります。

前腕屈筋群は、肘の内側から始まって、指先までつながっている筋肉たちです。

これで、『背中と胸』から始まって、『上腕骨の中ほど』につながり、『上腕骨の骨の近くの筋肉と筋肉の間』を通って『指先』までつながる『腕の前側(下側) & 表層』のつながりを確認することが出来ました。

表層のつながりは『大きな力』を出すときに活躍します。体幹側で生み出した力を腕に効率よく伝えることを意識しましょう。

私は、このつながりを『手の重さをしっかりと打面に伝える時』に使っている感覚があります。コンガで、余韻のある『ベース・トーン』を出すときなどに使うことができると良いですね。

【(奏法)_02:ベース・トーン】

◆『② 腕の前側(下側) & 深層』のつながり

『腕の前側(下側) & 深層』のつながりは『小胸筋』から始まります。

小胸筋は、肋骨から始まって肩甲骨の鎖骨下側のでっぱり(烏口突起)につながる筋肉です。

せっかくですので、烏口突起を見つけて、烏口突起から上腕骨の一番上につながっている『烏口上腕靭帯』をほぐしておきましょう。

さて、寄り道はこれぐらいにして、烏口突起から上腕へのつながりを辿っていきましょう。

まずは、『烏口腕筋』です。
烏口腕筋は、烏口突起から始まって上腕骨の中ほどの前側(下側)につながる筋肉です。

もう一つが、『上腕二頭筋』です。
上腕二頭筋は、烏口突起と肩甲骨の関節上結節から始まって橈骨上端の近くと前腕の筋膜につながる筋肉です。

上腕二頭筋が橈骨上端につながっている部分の腱を見つけてみましょう。

手のひらを上に向けた状態で、手をコンガの打面(や机の上)において下さい。反対側の手の親指か人差し指で、肘のしわの真ん中あたりを探ってみて下さい。少しコリコリした部分がありませんか。それが、『上腕二頭筋の肘側の腱』です。

イラストを眺めながら、痛気持ちいい範囲で親指で圧迫を加えながら、左右にコリコリして下さい。

それでは、続けて肘から指先までのつながりと辿っていきましょう。

まずは『円回内筋』です。
円回内筋は、肘の内側から始まって、橈骨の中ほどにつながる筋肉です。
主に前腕を内側にひねる動きに働く筋肉です。

次に『回外筋』です。
回外筋は、尺骨の上端付近内側と肘の外側から始まって、橈骨の上端付近につながる筋肉です。
主に前腕を外側にひねる動きに働く筋肉です。

イラストを眺めながら、『円回内筋』と『回外筋』の両方を触りながら、前腕を内側・外側にひねってみて下さい。
筋肉の収縮と弛緩の双方を感じ取ることができましたか?

さて、小胸筋から始まった、『腕の前側(下側) & 深層』のつながりは、『橈骨』につながったあとは、橈骨の近くの筋肉と筋肉の間を通って、母指球筋につながります。

母指球筋は手の親指の付け根のふくらみ(母指球)を構成する筋肉群です。
(短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋)

これで、小胸筋から始まって、『烏口腕筋・上腕二頭筋』、『円回内筋・回外筋』、『橈骨の近くの筋肉と筋肉の間』通って『指先』までつながる『腕の前側(下側) & 深層』のつながりを確認することが出来ました。

深層のつながりは『動作の細かいコントロール』をするときに活躍します。

私は、このつながりを『親指を使ったストローク』や『手のひらの角度の微調整』に使っている感覚があります。
ボンゴやパンデイロのサム(親指をひねるように動かして音を出すストローク)や、コンガの『オープン・トーン』、『ベース・トーン』の音色の微調整に使うことができると良いですね。

【(奏法)_01:オープン・トーン】

【(奏法)_02:ベース・トーン】

◆『③ 腕の後側(上側) & 表層』のつながり

『腕の後側(上側) & 表層』のつながりは『僧帽筋』から始まります。

僧帽筋は背中から始まって、肩甲骨の後ろ側のでっぱり(肩甲棘)と肩甲骨の外側のでっぱり(肩峰)につながる筋肉です。

せっかくですので、僧帽筋の縦の長さを身体感覚として掴んでおきましょう。イラストを眺めながら、僧帽筋の上の端(後頭部)に手をあてて、背骨沿いに手が届く範囲まで下に辿って行ってください。
次に僧帽筋の下の端(肋骨の下の端が背骨にくっついているところ)に手をあてて、背骨沿いに手が届く範囲まで上に辿って行ってください。

最後に両手を使って、僧帽筋の上の端と下の端を同時に触ってみて下さい。

いかがですか?実際に自分の手で触ってみると、僧帽筋の縦の長さを鮮明に認識できますよね。

このように、実際に自分の身体を触りながら動かして、鮮明な『頭の中の身体のイメージ』を作り上げるメソッドとして『ボディマップ』があります。
興味がある方は、リンク先の記事をご覧ください。

【ボディマップ(頭の中の身体のイメージ)】

さて、寄り道はこれぐらいにして、肩甲骨から上腕へのつながりを辿っていきましょう。

三角筋は、鎖骨の外側1/3の部分、肩甲骨の外側のでっぱり(肩峰)、肩甲骨の後ろ側のでっぱり(肩甲棘)から始まって上腕骨中ほどの外側につながる筋肉です。

三角筋が上腕骨につながっている部分を見つけてみましょう。

三角筋を指先で触りながら下に辿って行ってください。筋肉とは違う少し固い感触を感じるところが、三角筋が上腕骨につながっている部分です。

イラストを眺めながら、痛気持ちいい範囲で人差し指で圧迫を加えながら、左右にコリコリして下さい。

僧帽筋から始まった、『腕の後側(上側) & 表層』のつながりは、『上腕骨』につながったあとは、上腕骨の近くの筋肉と筋肉の間を通って、手を反らせる筋肉(前腕伸筋群)につながります。

前腕屈筋群は、肘の外側から始まって、指先までつながっている筋肉たちです。

これで、『背中』から始まって『上腕骨の中ほど』につながり、『上腕骨の骨の近くの筋肉と筋肉の間』を通って『指先』までつながる『腕の後側(上側) & 表層』のつながりを確認することが出来ました。

表層のつながりは『大きな力』を出すときに活躍します。体幹側で生み出した力を腕に効率よく伝えることを意識しましょう。

私は、このつながりをアップストロークの際に使っている感覚があります。

ハイスピードのシングルストロークロールを行いながら、音の強弱でリズムを生み出す際には、手首だけを動かすと良いと思い込んでいる方がいるかもしれません。
新しい世界を覗いてみたい方は、是非『腕の後側(上側) & 表層』のつながりを意識したアップストロークを取り入れてみて下さい。とても楽になりますよ。

◆『④ 腕の後側(上側) & 深層』のつながり

『腕の後側(上側) & 深層』のつながりは、『肩甲挙筋』と『菱形筋』から始まります。

肩甲挙筋は、背骨の上の方(第1~4頸椎の横突起)から始まり、肩甲骨の上端背中側(肩甲骨の上角)につながる筋肉です。

肩甲挙筋は主に、『肩甲骨の挙上(上にあげる)、下方回旋(肩甲骨の下の方を背骨側に寄せる)』に働いています。

菱形筋は、背骨の肩甲骨と同じくらいの高さ(第6・7頸椎の棘突起、第1~4胸椎の棘突起)から始まり、肩甲骨の背中側の縁につながる筋肉です。

菱形筋は主に、『肩甲骨の内転(肩甲骨を背中側で寄せる)、肩甲骨の挙上(肩を上にあげる)、肩甲骨の下方回旋(肩甲骨の下の方を背骨側に寄せる)』に働いています。

ここでは、菱形筋を使ったオススメのストレッチを紹介します。デスクワークやスマートフォンの操作で肩(肩甲骨)が前に出てしまっている方にお勧めです。

立った状態で手を背中側で組んで下さい。肘を曲げないように注意しながら菱形筋を使って肩甲骨を背骨側に寄せて下さい。この状態で手を後ろ上方に上げながら、みぞおちを斜め上側に上げるイメージで胸を張って下さい。

いかがですか?肩回りが楽になった感覚がありませんか?

それでは続いて肩甲骨から上腕につながる4種類の筋肉『ローテーター・カフ』を確認していきましょう。

それぞれの筋肉の役割は、
・棘上筋(きょくじょうきん)
上腕を外転(腕を横に持ちあげる)させる

・棘下筋(きょくかきん)
上腕を外旋(腕を外向きにひねる)させる

・小円筋(しょうえんきん)
上腕を外旋(腕を外向きにひねる)させる。

・肩甲下筋(けんこうかきん)
上腕を内旋する(腕を内向きにひねる)させる。
となります。

ここでは、ローテーター・カフが上腕骨の上端部につながっていることを確認して下さい。

次は、肩甲骨から肘へのつながりを辿っていきましょう。

 上腕三頭筋は、肩甲骨、上腕骨上部と中ほどから始まって、肘の内側(尺骨上端部)につながる筋肉です。

 上腕筋が肘の内側につながる腱の部分を見つけてみましょう。

 肘の少し上側を指先で触ってみて下さい。イラストの色が薄くなっている部分です。筋肉とは違う少し固い感触を感じ取れましたか?

『肩甲挙筋』と『菱形筋』から始まった、『腕の後側(上側) & 深層』のつながりは、尺骨につながったあとは、骨の近くの筋肉と筋肉の間を通って、小指の外側につながります。

深層のつながりは『動作の細かいコントロール』をするときに活躍します。

私は、このつながりを『スラップ・トーン』の音色の調整や『手のひらの角度の微調整』に使っている感覚があります。

歯切れのよい『スラップ・トーン』を出すために、『腕の後側(上側) & 深層』のつながりを意識したストロークを取り入れてみてはいかがでしょうか。

【(奏法)_03:スラップ・トーン】

■腕のつながりの使い方

 まず、『表層のつながり』と『深層のつながり』の役割をおさらいしておきましょう。

表層 : 大きな力を出すつながり
深層 : 動作の安定やコントロールをするつながり

 体幹側で生み出した力を腕に効率よく伝えるためには、表層、深層の両方をバランスよく動かすことが大切です。

 参考文献には、腕の4種類のつながりを理解するには『鳥の翼をイメージすると良い』との記載がありました。

鳥のように手のひらを下にして横に広げた状態で『鳥の翼』をイメージしてください。
4種類の腕のつながりを翼の部位にみたてるものとなります。

具体的には、
『①腕の前側(下側) & 表層』のつながり
 →空気をつかむ翼の下面

『②腕の前側(下側) & 深層』のつながり
 →空気抵抗を変える翼の前縁

『③腕の後側(上側) & 表層』のつながり
 →空に向いている翼の上面

『④腕の後側(上側) & 深層』のつながり
 →翼の後縁

となります。

ここで、4種類の腕のつながりをバランス良く使うためのエクササイズを紹介します。
立った状態で、手のひらを下に向けて手を前に出してください。
みぞおちの高さくらいにコンガの打面があるのをイメージして手を乗せる感じです。

この状態で、4種類の腕のつながりの一つだけを強くイメージしつつ、鳥が羽ばたくようにストロークを行ってみて下さい。
イメージする腕のつながりを順番に変えていきながら、腕の動きの感覚の違いを感じ取るエクササイズです。

違いを感じ取るためには相当程度のレベルの身体感覚が必要とはなりますが、違いを感じ取ることができた暁には、4種類の腕のつながりをバランスよく使った、思い通りのストロークはあなたのものです。

是非繰り返し取り組んでみて下さい。

レッスンコンセプト①:カラダの使い方

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主要参考文献

きまたりょう,世界一わかりやすい筋肉のつながり図鑑,KADOKAWA
荒川裕志,プロが教える筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト辞典,ナツメ社

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